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『海猫沢めろん随筆傑作選 生活』 感想


海猫沢めろん随筆傑作選 生活』を読んだ。著者の海猫沢めろん先生はイメージだけで話すならサブカル系おじさんである。

本書の装丁もそのイメージを裏切らない。サイズはハードカバーでも文庫本でもない少し珍しいタイプで、紙質も普通のものより少しサラサラ感じる(個体差かもしれない)。そしてこの昔の文士を感じさせる生活風景の表紙である。これだけで海猫沢めろんという人間を読むことにワクワクを感じさせてくれる。

内容は傑作選と銘打っているだけあり、2004年から2024年までの年表をなぞるように随筆が収録されている。そこでは氏の家を失ったり結婚して移住したりといったライフステージの変化やケータイを持たない生活をしたり見た目を気にしたり細かな生活の変化、文明や社会に対する思想が見られる。

それは時に共感できるもので、たまに何を言ってるのかわからない。それでも読み進めてしまうのは生きていく中で避けられぬ働くこと、老いることなど誰もが思う苦しみや日常のケータイだったり金欠について困りごとを喋っている身近な人間らしさが魅力だからか。

著者の目指すところは無頼派作家らしいが、読んでいるとそうは見えない。著者自身も後書きで自分を新時代の無頼派(クリーンなのに破滅に突き進む)とある。それもそれでどうなんだ。新時代はダメな人じゃなくてヤバい人になるのだろうか。

収録されている中に「無頼は無理だが道理は通す」という随筆がある。

文筆業によって人生が狂いだしている海猫沢めろんが谷中墓地を全力疾走していて転けたとき、目に止まった色川武大の墓から想いを馳せる随筆である。

色川の筆名に関する想いを紹介する文であると同時に海猫沢めろんの無頼に対する尊敬の念を感じる。そしてそれは海猫沢めろんの筆名に関する想いと色川の無頼に対する心も見せる。これが非常に良かった。色川の書籍も読んでいるからという贔屓目もあるが、それでもこの本における無頼の到達点だと思う。

変わり種として他にも他にもイタコに太宰治を降ろしてもらう話(タイトルだけで面白い)やテロリズムというタイトルのみんなも書けそうな自爆テロ随筆がある。前者は笑えたし後者は喰らった。それ以外の多くは気構えず、寝転びながら読めるものがほとんどだ。

随筆を買う人は彼の他の作品を読んだことがある人がほとんどだろう。本書を読んだことで白面の海猫沢めろんに目鼻くらいはついたんじゃないだろうか。気になる方は読んでみてください。

これは余談だが後書きには海猫沢めろんと囁くといいことが訪れると書いてあった。私の生活にもいいことがあるかもしれない。ディスクロニアの鳩時計読めるといいなぁ。